「えっと、えっと」

「無いんですか?困りましたね」

駅員さんは深くため息をついた。

私はどうしたら良いかわからない不安と恐怖から泣きそうになった。

そんな私に同じ歳ぐらいの男の子がスタスタと歩いて駅員さんに声を掛けた。

「あ、僕が払います!友達なので。いくらですか?」

「お友達なの?えっと、子供料金でも700円かかるけど大丈夫?」

「あ、はい、大丈夫です。」

そう言って男の子は払ってくれた。

「えっと、あの…」

「ここ終点だからとりあえず降りよう」

男の子は優しくニコッと笑顔で言ってくれた。

「あの、ありがとうございます」

男の子はいえいえと照れくさそうに言った。

「ここって何処なんだろ?」

「三次って所みたい」

「え!?」

私は物凄い遠くまで来た事に驚いた。言われて見たら私が住んでる街よりも空気がずっと冷たく肌に触れる寒さが痛く感じた。

「ありがとう、後は帰りの電車乗って帰るので。あのお金返すので連絡先とお名前聞いて良いですか?」

そう言うと男の子は苦笑いした。

「実は僕もここで降りるんじゃないんだ」

「え?どう言う事?」

「こ、怖がらないで聞いてくれる?」

実は私の事を以前から駅で度々見かけてたしい。

普段は男の子と同じ電車で帰るのに今日に限って別の乗り場へ行き、生気が抜けたような顔をしてたから心配して一緒の電車に乗って付いてきてしまったとの事。

「あ、あの!僕の思い過ごしや勘違いで普通に何処かの駅で降りて帰るようなら僕も折り返しの電車に乗って帰ろうと思ってたんだけど、その…あの…」

彼の色々必死に弁明する姿に私は思わず笑ってしまった。

「心配してくれてありがとうございます」

マシーンだとかサイコパスとか言われるぐらい中々人に心を開かない私。

お礼の言葉を述べても目は死んでると言われるぐらい無表情な私。

今日初めて話をした男の子に私は自然と笑顔が出ていた。