なんで神様は天才な声を持つ拓郎から声を取るんだよ。

取るなら僕から取れよ。

これ以上僕の大切な人を取らないでくれよ。

もう僕は拓郎と関わらない方が良いんかな。

悩む日々を過ごす中、デモテープを聞いた一つのプロダクションから連絡があった。

今度一度生で聞かせて欲しいとの連絡だったが

「あ、すみません。事情があって今バンドは」

残念ながら断りを入れた。

「ボーカルの彼は病気持ちなんだってね?またやって倒れたらたまらないから俺はもう誘わないでね」

ベースの利伸は沢山友達を招待していたのに中断した形で終えたライブが嫌だったみたいで僕達から離れた。

大輔と二人スタジオで今後の事を話そうと待ち合わせを約束していた。

お互い声に出さない時間が流れる。

数日前まで音楽の世界に飛び込む事も頭がよぎってただけにここで終わらせたくない気持ちがあるものの、現状二人ではどうしようもなくて。

見えない壁が僕達の邪魔をする。

『向こう』に行きたくても行けないどうしようもない壁。

希望を持ちたくても持てれない絶望

「拓郎の話し聞いた?」

「ああ、親父さんから聞いた、亜依子ショックで泣いてたって」

後日、亜依子から話しがあると僕と大輔は呼ばれていた。

「あ、亜依子来たみたい」

大輔がそう言うと鼻息荒い亜依子ちゃんがやってきて開口1番怒り気味に放った。

「私、バンドしたい。だから歌わせろ!そしてベースもやってやるわ!」

てっきり拓郎の事で相談とかなのかと思ったら、怒ってるし予想してなかった話に驚いた僕は聞いた。

「なんで?」

すると亜依子は自分の話しを興奮気味に話しだした。