【短編】猫が運んだ淡い初恋


最後に挨拶し合った後、市瀬さんは彼の腕を引っ張りながら駅の中へ消えていった。

どっちも優雅に現れて、嵐のように去っていったな。


……お似合いだったな。



「すーがわっ」



ぼんやり後ろ姿を眺めていると、才木さんに背中をポンと叩かれた。



「修羅場になるかと思ったら、まさか盛り上がるとはね〜」

「見てたの?」

「うん。大きくなったねって話してたところから」



マジか。結構最初から見られてたのか。

大丈夫だったかな? ちゃんと笑えてたし、顔に出てなかったよね?



「あのお姉さん、実玖と似てたね」

「ええ? どこが?」

「雰囲気。あと動物が好きなところ。須川の好みがよーくわかったよ」

「ちょっ、何言って……」



言い返そうとしたが、ニコーッと上がっている口角を見て黙り込んだ。

浮かれていた恋心を見抜かれた上に、失恋した瞬間までも見られてしまった。


才木さんが気づいたんだから、あの二人にも気づかれたかもしれない。