「申し訳ないです」と口にしようとしたら。



「一匹だけでも預かりたい気持ちはわかる。だけど、まだ小さいから引き離すには少し早い。だから、ここは僕らに任せてほしい」



優しくも力強い眼差しを向けられ、またも自分の考えの甘さに情けなくなった。


母親がいないだけでも寂しいのに……俺は猫達の気持ちを考えずに、兄弟達から一匹だけ引き離そうとしてた。


……最低だ。
これじゃ猫好きと名乗る資格なんてない。むしろ失格だ。



「……わかりました。お願いします」

「本当にすみません。ありがとうございます。よろしくお願いいたします」



獣医さんも言っていた。

飼ってくれる人が早く見つかることよりも、子猫達の幸せが大切だと。


時間がかかってでも、彼らを心の底から愛してくれる人を探したほうがいいに決まってる。


母と一緒に、彼女とその家族に向かって深く頭を下げた。





「────市瀬さん、ありがとう」

「ううん、こちらこそありがとね」