「ご両親が施設で過ごしていたこと知ってるんだよね? 自分も同じ施設出身でね、俺の姉ちゃん兄ちゃんみたいなものだな」

「家族、いたんですね……知らなかったです」

「まぁ、知らなくても仕方ないよ。彼らも話してなかったんだから」


 そう言うと有坂さんは一枚の封筒を差し出した。


「これは、貴仁さんがもし自分達に何かあったら渡してほしいって言われてたものだ」

「……え?」

「俺らは、ほぼ身内なんていないからお互い卒園生同士で半年に一度集まってさ手紙を渡すんだ。もし自分に何かあれば渡して欲しいって託してね」


 クローバーの絵が描かれている封筒には【芭奈へ】と綺麗な字で書かれていて、それを手に取る。