「朝からすごいね、ねえ仁乃……仁乃? 顔、赤いけど」
「香織……わたし、おかしいかもしれない」
「元からだよ」
「うるさい」
「うん、いつも通り」
香織は大袈裟なくらいに頷いて、それから、恋? なんて立てた人差し指をくるりと宙にまわす。
「これがうわさの恋ってやつなんですか? こんなよくわかんない闇鍋みたいな……、闇鍋に正規の鍋のもとをぶち込んでなんとなく質量が増えて美味しそうに見えるこれが……?」
「……なんか、まだちがいそう」
「まだ!?」
それにしても、なんて、目を見開くわたしをよそに香織がつぶやく。
「すごいね、彼」
「白井くん……の、どこのこと言ってる?」
白井くんのすごいところはいろんな意味でたくさんあると思うし、どこを指しているのかあんまりわからなくて。
「だって彼、理系でしょ」
「……っえ?」
「地学、とってないじゃん」
「…………え……っ?」



