白井くんがゆっくりと顔を傾ける。聞きたくなかった。知りたくなかった。ちょっとまって、白井くん。
「宮坂さんに会えるのを楽しみにしてると、早く着きすぎちゃうんですよね。今日の場合は、靴どっちかなあ、みたいな。今日は体育ない日ですけどスニーカーでしたね」
そうやって遠目から見るのは会うって言わないですし、ていうか、その。
「寝ました?」
「はい」
「かぶせるくらいの即答、怪しいんですが」
「あ、予鈴鳴りますね。ではまた」
「白井くん……っ?」
振り返らない。振り返らないってことは、よっぽど知られたく……──おかしい、やっぱりわたし、おかしいよね。
なんで、白井くんなら絶対振り返るだろうし、くらいのことを思ってるんだろう。昨日送ってもらったあとだって、後ろ姿を見送った。それが普通なんじゃないの……?



