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「おはようございます」
「おはようございます。白井くん、ありがとうございました!」
深々と頭を下げると、白井くんは不思議そうに首をかしげた。
「俺がありがとうございますって感じなんですけどね」
「どうしてですか?」
「宮坂さんが俺を頼ってくれて嬉しいんです」
白井くん……、そんな聖人君子みたいな、
「ほら、罪悪感っていうものはひとを動かすんですよ。堕ちてきてくれないかなって」
「…………そういえば白井くん、昨日大丈夫でしたか?」
「大丈夫でしたよ。防犯ブザーの出番はなかったんですけど」
「なんで残念そうな顔を……」
「さすがに何もないのに鳴らすのは、近所迷惑だよなあと思って。騒がしい場所にいけるまで、紐を引っ張るのはお預けです」



