「男の子? 白井くん? って呼ぶ声、少し聞こえてたけど」
「え、恥ずかしい」
「夜だし外だし聞こえちゃったよねえ」
わたしのばか。
ぼふ、とソファに沈む。
わたしも何か、やることある? あとはご飯炊けるの待ちだからないかな。おかずもサッてあっためるだけ。そっか、ありがとう。
「恋人?」
「ちがう」
「否定早いね」
「……うるさい」
「さっき階段駆け上がったのって、どうして? 落ちやしないかってひやひやしちゃった」
「落ちないよって言いきれないのがいやだなあ」
「仁乃、意外とドジっ子だもんね」
「そんなことないですが」
お母さんはやたら、わたしをドジっ子にしたがる。そんなことはないと思うんだけどな。



