「できなくたって今まで困らなかったし」
「家庭科を選択した自分を恨みなよ」
「さっきから何十回も過去の自分を呪ってる」
「口を動かしてないで、早く終わらせてよ。本読み終わる」
私と田中くんふたりきりの静かな教室は、なんだか居心地がいい。こんなふうに穏やかな時間がずっと続けばいいのに。
……いや、でも裁縫をずっとするのはごめんだ。
「……た、田中くーん?」
助けて!と懇願する眼差しで見てみれば、横目で睨まれてしまう。
「いやだ。自分の分は自分でやれ」
「細かいの苦手なんだって!」
こんな小さな針でちくちく縫うなんて本当イライラする。
基本こういう裁縫とかは弟の潮がいつもささっとやってくれるのでは、私の出番はないのだ。
すごい器用だし、裁縫とか得意だからボタン付けとかお願いするとすぐに出来上がってる。
出来た可愛い可愛い弟なのだ。うん。



