「え、やめて。腕掴まないで」
「優しさどこ!?」
「うるさい。静かにしろ」
「優しさ溶けてる!」
いいから離してと腕を振り払われてしまった。田中くんの優しさは一瞬の幻のように消えてしまって、がっくりと項垂れる。
でも冷たいことを言いながらも、田中くんにとっても私は大事な友達に違いない。田中くんはあまり周りに興味がないのか、女子に話しかけることも滅多にないし、こうして仲の良い女友達は私くらいだ。
にこにことしながら見つめていると、訝しげな表情で眉を顰める田中くん。
そして、私に爆弾を投下した。
「あのさ」
「ん?」
「家庭科の課題忘れてるだろ」
家庭科の課題……?
そういえばと過去に出された課題を思い出して、私は青ざめていく。どうして選択授業を家庭科にしてしまったんだろう。
私の居残りは確定した。



