「今手当て中なんで、後にしてください」
「俺が怖いか?」
怖い、と聞かれると返答に困る。確かにこの人の醸し出す雰囲気や立場というのは恐れられるものなのかもしれない。
だけど、恐怖だけがこの人に対する感情を占めているわけではない気がする。
「不思議な人、だとは思います」
ゆっくりと顔を上げると、吸い込まれそうなほど黒い瞳と視線が交わる。
こうして間近で目が合うと、やっぱり怖いかもしれない。真っ黒な海に音もなく溺れて窒息していきそうな感覚になる。
あまり関わらないほうがいい相手なのだと、改めて実感する。
私と彼とでは、生きている場所が違う気がした。
「聞いてもいいですか」
「内容によるな。答えられることなら答える」
「どうして、百瀬茅織を傍に置いているんですか」



