「我慢してください」 敦士の手を掴み、引っ掻き傷のある手の甲に消毒液を垂らす。 「痛い」 「だから、我慢してくださいって」 この人、見かけによらず子どもっぽい。威圧感はあるくせに。 本当に引っ掻き傷があるので、猫に引っ掻かれたって本当なのかもしれない。 「凪沙」 「なんですか」 「こっち見ろ」 突然そんなことを言われたって今消毒中なんですがと、眉を寄せる。 視線は敦士の手の甲のまま、近くにあったティッシュで消毒液を拭っていく。