「そっちが蒔いた種でしょ」
今は敬語なんて使ってやらない。
危ない橋ギリギリで渡って、ここまできたけれど危うく本当に拉致されるところだった。
「まあ、そうだな」
「手当てぐらいはしてあげてもいいけど」
「その言葉、忘れんなよ」
鋭い視線が私ではなく、抱きついている男に向けられる。
男は私に抱きつかれて動きを封じられていたため、背後に誰がいるのかわからず、焦った様子で私を突き飛ばしてきた。
「……いった」
地面に尻餅をつき、男を睨みつけるも、男の視界には既に別の人物が映っていた。
「お前……っ!」
陽に照らされている燃えるような紅い髪。そして、髪とは対照的な凍てつくような冷たい瞳。
先程抱きついた男よりも威圧感が遥かに上回る。
「なんでこいつがここにいんだよ!」
他の奴等も目を擦りながら立ち上がり、現れた人物に驚愕している。
「やべ……っ」
男達が真っ青になるのも無理はない。
現れたのは、過去に彼らを痛い目に遭わしてきた張本人の敦士なのだから。
「どいつが俺と遊んでくれるんだ?」
歪んだ笑顔は狂気に満ちていて、ネジが一本外れているとしか思えない。
これから人を殴るのを、この男はすごく楽しみにしているのだろう。



