誰とも話さなさず、一人きりで賑やかな教室にいると声も言葉も、感情すらも窒息して死んでいくような気がしてた。
そんな私に話しかけてくれた隣の席の田中くんに驚きながらも頷くと、丁寧にテストにでると先生が言っていた箇所も教えてくれる。
正直そのときはあまり田中くんのことを知らなくて、近寄りがたい無愛想な人というイメージだった。
けれど話すようになると、案外お節介というか口煩くて……いや口が悪い人だと知った。
『早弁すんな、弁当くさい』
ちょっとお腹が空いてお弁当を開けると、ものすごく嫌そうにされて強制的に蓋を閉めてくる。
『カーディガンが裏表反対だけど、それわざと?』
そっと指摘してくれればいいのに、あえて空気を読まないのかはっきりと言ってくるし、間違えちゃったと笑うと、『世の中の服の多くにはタグがついてるから、そこを確認してから着た方がいい』と引きつった顔で当たり前のことを教えてきたこともあった。
『変な顔してこっち見るな』
普通の顔をしているのに、そんなことを真顔で言われることもあった。
……いや、失礼すぎる。
兎にも角にも、彼が話かけてくれるたびに私は自分がここにいてもいいんだって思えた。田中くんのおかげで私は教室に居場所を見つけられたのだ。
だから田中くんを守りたくて、敦士たちの言いなりになった。
けれど、私がしていることは田中くんにとっては、しないでほしいことだった。
それなら私は……



