田中くんの言っていることは正しいと思う。
確かにあの連中と関わるだけで、見ず知らずの人に声をかけられて連れて行かれそうになったりと、妙なことに巻き込まれていく。
だけど、田中くんに危害が及んだら嫌だ。
本人に気にするなと言われても、やっぱり考えてしまう。
昼休みに廊下で、ひとり黄昏れながら深いため息を吐く。
近くで女子たちの笑い声が聞こえてくる。楽しそうだけど、私にはああいう空間は向いてない。
私は女子同士の褒め合う会話がどうも苦手だった。
入学した当初頑張って合わせていたら、だんだんと疲弊して、少し距離を置くようになったのだ。
そんなとき体調を崩して熱がなかなか引かず、一週間休んでしまった。
ノートもとれていないし、クラスの女子たちとも完全に距離ができて、離れたがっていたくせに孤独感を味わった。
でも無理して一緒にいるよりひとりの方がずっといい。
そうやって強がっていたところに、田中くんが面倒くさそうに声をかけてきた。
『休んでた分のノート、写す?』
たった一言。
それだけだったけれど、私にとっては救いだった。



