たすけて!田中くん

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翌朝、目覚めると隣で寝ていた凪沙も目が覚めたみたいで大きなあくびをしながら目をこすっている。


酒癖は悪いけど、寝起きはそんなに悪くないんだよな。


「んー……あ、おはよ〜」

暢気だなと思いながら目を細めた。凪沙の手を掴み、左の薬指を握る。


「え、なに? どうしたの」

「覚えてないだろ、昨日のこと」

「昨日?……ごめん、わかんない」

そうなんだよな。コイツは酔っている間のことは大抵忘れている。
ってことは、昨日のこともさっぱり忘れてしまったってことだ。


「お前のこの指、もらったから」

「え、なに!? それどういうこと! 怖!」

「うるさい。返さないから」

「いや、返して!」

意味をまったくわかってないな。



「うるさい」

空いた手で凪沙の頭を引き寄せて、唇を重ねた。
唇を離して顔を覗くと、真っ赤になった凪沙が言葉にならない声を上げて、思いっきり抱きついてきた。


……酔ってなくても可愛いとこはあるみたいだ。

早いうちに指輪買いに行ってくるか。また変なのが寄ってきたら、嫌だしな。



「あのさ」

伝える言葉は色々考えたけど、やっぱこれがシンプルで伝わりやすいはず。