たすけて!田中くん



私の手を掴み、指先を自分の唇に触れさせる。

指先の柔らかい感触に昨夜のシャワー場での出来事が脳内に蘇る。


——『消毒するけど、いい?』

——『喜久本、いい子だから少しの間口開くなよ』


唇に落ちる熱い吐息に、伏し目がちな瞳。そして、色気を含んだ大人びた表情。




「へぇ、意識してんだ?」

「してませんしてませんしてません」

にやりと意地悪く微笑む田中くんから、目を逸らして手を振り払う。

や、やばい顔赤くなってるかもしれない。


「好きなだけしたら?」

「あ、あんなの消毒だから、どうってことない!」

そうだ、アレは消毒だ。気にしちゃダメだ。

いくら、好きな人とのキスだからって相手に感情なんてこもってないんだから。