「喜久本」
苛立ったような声音の田中くんに、私はびくりと肩が跳ねる。
「ちょっと座って」
「え? あ、うん」
私と田中くんは近くにあった椅子に座って向かい合う。そして深いため息をつかれた。
「あの、田中くん? 今日学校いなかったよね?」
「ちょっと兄貴と話してて」
そう言った田中くんは拳を握っている。
……それはつまり敦士を殴ったり色々あって遅刻したってことなのかな。
「兄貴やゆたと二人っきりになるって危機感ないわけ?」
フレームのないメガネ越しに真っ黒な瞳が私を捕らえる。
「ええっと……」
「本当馬鹿だね、喜久本って」



