「じゃあ、どうして田中くんが辛いときに傍にいてあげなかったの?」
昨日の帰り道に聞いた話だと、田中くんがお母さんのことで辛いときに、百瀬さんは敦士の方にいた。
当時の状況を正確には私はわからないけれど、本気で好きで心配なら田中くんのことだって気にかけるべきだと思う。
「静くんはしっかり者だし、勉強の邪魔しちゃいけないって思ったから……」
「百瀬さんが思っているほど田中くんは強くないと思う」
百瀬さんの大きな目には涙が溢れそうなほど溜まっている。
まるで彼女が傷ついてるような表情に、私は胃のあたりがじわりと熱くなり苛立ちを覚えた。
自分の周りにいた幼なじみたちは、みんな兄の方に行ってしまい、一人で寂しかったのは田中くんだ。
平然を装っていたって、きっと田中くんは傷ついたはずだ。自分ではなく、兄の方を心配していたんだから。



