「私は田中は田中でも、弟の方がいいので」
この人は田中でも、私の大好きな田中くんじゃない。
私は他の誰でもなく田中くんがいいんだ。
あの人が好きなんだ。
「俺よりアイツの方が面倒だと思うけどな」
「私的にはあなたの方が面倒なんですけど。だいたい本気じゃないくせに」
「本気だよ」
「え? ちょっと、やめっ」
ぐるんと視界が移動して、背中を打ち付ける。
「は……?」
突然強い力に押し倒され、敦士が上に乗ってきた。
近づいてくる顔を必死に押し退けるけれど、強引に迫ってくる。
「やめっ」
「本当は手を出す気はなかったんだけどな」
「じゃあ出すなっ!」
離れてほしいと胸を押してみるけれど、びくともしない。
「静と話してるお前みたら欲しくなった」
「意味がわからないっ!」
まずい。このままじゃ力で負ける。
いつになく本気な眼差しに、私は息を飲む。



