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夜道を歩きながら、気まずい無言が続いていた。
隣を歩く田中くんは私の手を握ったままだ。
……手汗、やばいかもしれない。
どうしよう。恥ずかしい。や、考えるな。考えると余計に手汗かきそう。
違うことを考えよう。
見上げれば夜空にぽつぽつと星が瞬いている。
そして、一番の存在感を放っている月をぼんやりと眺めていると、ぎゅっと手を握る力が強くなったのを感じた。
「お前を巻き込んだのは俺だ。ごめん」
「え……」
「喜久本の存在がバレないようになるべく教室以外では話さないようにしてたのに……結局バレた」
いつになく弱々しい田中くんの声。
ちらりと横を見やると、眉を下げて微笑まれる。
メガネのない田中くんのことを、まだ見慣れない。
でも……普段とは違った雰囲気を醸し出している田中くんに見惚れてしまう。



