誰かから電話が来たらしく、田中くんが眉間にシワを寄せながら「うるせぇ」とか柄の悪い言葉を発している。田中くん、案外口が悪い。
相手は誰だろう。
「……ああ、見つけた。わかった。……じゃーな」
電話が終わった田中くんは少し怖い目をしていたけれど、私の視線に気づくと目尻を下げた。
「終わったってよ」
「え、あ、そうなんだ」
どうやらこの乱闘が片付いたらしく、ほっと胸を撫で下ろす。
「ん」
何故だか田中くんが背を向けて少し屈んだので、私は首を捻る。
「どうしたの?」
「乗って」
「の、乗る!? でも」
おんぶしてくれるってこと、だよね?
私そこまで怪我してないし、闘ってた田中くんの方が疲れてんじゃないかな。
「これじゃ不満? 悪いけど、俺はお姫様だっことかは嫌」
「べ、別にそれを望んでいるわけじゃ!」
私みたいなのが田中くんにお姫様だっこされてるのをサトシとかが目撃したら、「脅されたのか……可哀想に」とか思うに決まってる。それくらい昔から女子扱いはされてこなかった。



