「違う」
「そ、そうなの?」
「んなことより」
冷たいコンクリートの壁に押し付けられて、田中くんが私の肩に額を乗せる。
少し濡れた黒髪が私の耳を擦った。
伝わる重みが、温かさが、熱が全てが私を芯を震わせる。
「た、たた……っ」
どくん、どくんっと心臓が騒ぎだす。
予測不可能なこの状態に思考がついていってない。
「まじで無理」
「え、ごめん。そこまで拒否られるなんて」
「ちげーよ。……喜久本になんかあったらってすげぇ焦った」
どうして田中くんが夜の学校で、ここまで必死に私を捜してくれていたんだろう。
そもそも誰から————
「心配かけるなよ…………馬鹿」
普段とは違う掠れた声に胸の奥がキュッと苦しくなる。
どうしてそんな声でいつもよりも優しいことを言うの……



