たすけて!田中くん



この危機的状況に妙な罪悪感とかで、あの子は出てきてしまうかもしれない。

守ると決めた以上は、それだけは防ぎたい。ふたりで捕まるなんて一番最悪な展開だ。


すぅっと息を吸いこむ。


「絶対に動かないで」

はっきりとした口調で音楽室全体に響かせるように言った。


「あ?」

きっと百瀬さんなら、今自分に向けられた言葉だってわかるはずだ。

だから、お願い。



「そこにいて」

絶対に動かず、騒がず、息を潜めていてほしい。


これ以上状況をややこしくしないために。


「てめぇ、意味わかんねぇこと言ってんじぇねぇぞ」

「ついていけばいいんでしょ。どこに行けばいいの?」

うまく場所を口に出してくれたら、百瀬さんがそれを敦士たちに伝えてくれるはずだ。


私とひとりの男が対峙する。

男が一歩踏み出した瞬間、私の腹部に痛みが走った



「っ、ぐ……ぁ」


胃が捩れるような痛みに顔を歪ませながら倒れ込む。

痛みによって生理的な涙が浮かんで歪む視界。そこにニヤリと気味の悪い微笑みを浮かべている男が映る。


もう一発腹部に拳を入れられ、その衝撃に咳き込む。


や、ば…………



「餌は大人しく寝てろよ」


その声を最後に私は意識を失った。