「でもその人、出ないんでしょ?」
「う、うん……やっぱりダメみたい」
しょんぼりとする百瀬さんは、泣き出しそうな表情で下唇を噛みしめている。
この様子だと片想いなのかな。
「そんなに好きなの?」
「……好き」
桃色に染まった頬に潤んだ瞳が今まで見た中の彼女で一番可愛らしかった。
まさに恋する乙女といった雰囲気。
「あっくんに連絡してみるね」
敦士に電話をかけている百瀬さんを眺めながら、小さくため息を吐く。
こんなふうに危険が迫っていても好きな人のことを考えて頬を染める百瀬さんは、案外肝が座っているのかもしれない。
私は危険な日常なんて送りたくないし、この人たちと関わるのは今度こそこれで終わりにしよう。
そう思っていると————ぞわり、と全身が粟立つ。
咄嗟にドアの方向に視線を向けて、息を飲んだ。



