「追われてるのっ!」
「は?」
なにに?と聞くよりも先に、百瀬さんが私の腕を掴む。
「早く逃げないと追いつかれちゃう!!」
切羽詰まっている様子で私に縋りついてくる彼女はどうやら演技ではなさそうだ。
校内で追われてるってどういうこと? もしかして敦士ファンの女子達から?
それにしても百瀬さんの体がガタガタと震えていて、様子がおかしい。
職員室に逃げ込んでも、生徒に無関心なここの学校の教師たちは頼りにならない。
いじめを目撃しても見て見ぬ振りをする人たち。元々偏差値も高くないし、不良たちが多いここの学校では喧嘩なんて日常茶飯事だし、生徒がボコボコにされていたら「ほどほどにしておけ」って言うくらいでおしまいだ。それが青橋高校。
厄介事の中心である敦士たちには絶対に関わりたくないはず。
彼女の手を取れば、また巻き込まれる。正直かなりめんどくさい。
だけど————じゃあひとりで逃げればなんて突き放すこともできない。
少し力を入れたら折れてしまいそうな細い腕を取り、走り出す。
「な、凪ちゃ」
「いいから走って! 追われてんでしょ」
敦士に関わってから次から次へと厄介事ばっかりだ。
せっかく日常戻ってきたと思っていたのに!



