私、田中くんに呆れられてばっかりかも。
家出る時にぐしゃっと適当に巻いたモスグリーンのマフラーが田中くんに外されてしまった。
首元に冷たい風が当たり、寒さに身を震わせた。
「これくらいちゃんと巻きなよ」
「う……っす、すみません」
「髪の毛もぐしゃぐしゃだし」
きゅっと後ろで結ばれて、首回りが再び暖かくなる。
さっきの適当な巻き方よりもずっと暖かい気がした。
巻いてくれる時に少し触れた田中くんの指先も暖かくて少し意外。
細くて冷え性っぽいのに。とか言ったら偏見だとかいって怒られそう。
「ほら、行くよ」
先を歩き出す田中くんをぼんやりと見つめていると「喜久本」と私の名前を田中くんが呼んだ。その声はほんの少し柔らかい気がする。
自分のマフラーに手を添えて、田中くんの首もとに視線を向ける。
お揃い、だ。
田中くんと一緒の巻き方。
「田中巻きだ」
「意味わからないこと言ってないで早く。置いてくよ」
「ま、待って!」



