女性のお客様は段々ととびきりの笑顔になっていく!!


 受付の女性の声に気付かなければ、私はジット見つめてしまっていたかも…


 なんだか、急に恥ずかしくなり…ワザと帽子を直すふりをし、グッと深くかぶり顔を隠す…


 代金を頂いて急いでお店を出れば、数歩歩いて…ハァハァと…呼吸をすることを忘れるほど。


 やはり別世界…例えるなら、これからシンデレラになる、女性達の集まる場所。


 でもなんで、あの男の人をジッと見つめてしまったのかなぁ…


 イケメンだったから…!


 お客様がシンデレラなら、美容師さん達は魔法使いかも?


 あの人はとびきりの魔法使いなのかもね。



 そう思っていた人が…辻本さんだった。



 それから数回配達へ行き、そのたびにお店の中で彼の姿を探してしまう私。


 今日もいつものように、緊張の中何度も深呼吸をして、美容室へ入って見れば…


 受付に彼の姿が…


 一気に緊張がマックスになっていく、お客様を見送ったあと、「いつも、美味しいお弁当をありがとう」と不意に優しい笑顔を向けられ。



 なぜなのか…身体中が“かぁあ”ーと熱くなる!


 そんな私を悟られたくなくて、わざとらしく冷静に頭を下げた。


 それが精いっぱい!


 嫌な印象を与えた…きっと。


 笑顔が出来なかった私。