止めたけど,じっと目の前の女子を見て気づいた。

ーッ,たぁ……あぁっ,ごめんなさい!

自分より俺を優先して,打算も何もなく俺に謝ったからだ。

礼儀をわきまえた人間は嫌いじゃない。

むしろ好感が持てる。

俺が日頃全てをめんどくさがるせいで,俺の回りによってくる女はろくなやつじゃない。

少し新鮮だった。

だからぶつかられた時,イラッとするより先に手伝ってあげようと思ったのだ。



「あの,手伝ってくれなくて結構です。ぶつかってすみませんでした。自分の授業に向かってください」



は?

やっぱり,俺はイラッとする。

いちいち去るのも面倒だし,あと少しだから余計に。

そんなこと言う暇あったら絶対に拾った方が早い。

めんどくさいことは嫌いだ。

俺は顔をあげて,初めて女の顔を見る。

はぁ?