追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

モニカの箸から麺が滑り落ち、だしが跳ねてテーブルを汚してしまった。

教会の頂点に立つ今の導師はいわばまがいもので、これまで教えを信じて育った人生はなんだったのかと愕然とする。

「それじゃ本当の導師は……バンジャマンさんが今も導師様なんですか?」

「今はただの食堂のじじいじゃよ」

やぶれた布巾でカウンターを拭きつつ、老爺が目尻の皺を深めた。

「お嬢さんは聖女のなりそこないだと言っておったな。それも違う。まだ聖女になっていないだけじゃ。正しい導きを受ければ覚醒できるじゃろう」

「私はまだ聖女になれる可能性があるんですか? 私を導いてくれる人はどこに?」

「もう出会っておる」

モニカが「え?」と問い返してもバンジャマンは答えをくれず、布巾を洗いに流し台の方に行ってしまった。

「うどんが伸びる。食べなさい」

どうやら導師についても自分で考えろということのようで、モニカの眉尻が下がる。

うどんをつるつると食べながら、ロストブでの知り合いの顔をひとりひとり思い浮かべてみたが、それらしき人物に思い当たらなかった。