追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「ダリア、帰るぞ」

「お父様、このまま引き下がるなんて」

「よい。恩知らずには天罰が下るだろう」

公爵はゆっくりとシュナイザーの前を横切り退出する。

一見、怒りは収まったかのような笑みを浮かべていたが――。

(さすがゴウランガ家の当主。付け焼刃の俺にはない迫力だな)

ため息をつき、鳥肌の立つ腕を撫でたシュナイザーであった。



その頃、水色のエプロンドレス姿のモニカは、東地区の街外れを歩いていた。

今朝方降った雨で地面はぬかるみ、ところどころに水たまりが残っている。

歩きにくいが青空の下でのひとりでの散策は気持ちがよかった。

(あの人たちはいるかしら?)

目指しているのは井戸掘りに困っていた住人の家だ。

間もなくしてその家の横にある小さな野菜畑にさしかかると、七人の男女が集まっていた。

男たちは皆泥にまみれておりバケツや木樽に腰かけて談笑し、ふたりの女性が水や切ったリンゴを差し出している。

どうやら井戸掘りの休憩中の様子。

そばには掘り出した土でひと山ができていた。

「皆さんこんにちは」

モニカが近づいていくと、全員が笑顔で歓迎してくれる。