追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

修練所の庭の片隅でシュナイザーが黙々と薪割りをしていると、四つ年下の七歳の少女が駆けてきた。

クリッとした快活そうな目やさくらんぼのような唇、ちょこんとした鼻が可愛らしく、柔らかそうな白い肌と金色の髪は美しい。

ワクワク顔のモニカが『ザッくんあのね』と声を弾ませた。

『お願いがあるの。そこの塀の前で肩車して』

『脱走する気か?』

『うん。旅の大道芸人さんがきているんですって。見に行ってくるわ』

『先生たちに叱られるぞ』

『だって大道芸人よ? お勉強より大事だわ。見ないと後悔すると思うの。協力してくれたら、お土産にお花を摘んできてあげる』

勝手に街に出てはいけないという規則をモニカもわかっている。

それを守るより好奇心のままに笑顔で脱走を図るモニカが、シュナイザーの目には眩しく映った。

『花はいらないが、ひとりで行かせられるか。攫われたらどうする。行くなら俺も一緒だ』

『いいよ。連れて行ってあげる』

『逆だろ』

子供の頃の方がモニカは自分の意志を貫いていたように思う。

それが成長するにつれ、疑わずに教会の指示を聞くだけのいい子になってしまった。