取り出したのは袖にレースがあしらわれたミントグリーンのデイドレスで、鏡台の前で体に当てて似合うかどうかを確かめてみた。

この国に来てお洒落をする楽しさに目覚めたモニカだが、今は心が弾まない。

「聖女になれなくて残念だわ」と独り言ちる。

「よかったとは思われないんですか? 聖女になったら死ぬ運命なんですよね?」

「聖女の務めを果たして死ぬのは怖くないわ。皆に感謝されるのよ。素敵なことでしょ」

「感謝されたいから聖女になりたかったんですか?」

ナターシャはベッドメイクの手を止め、首を傾げている。

「私、なにかおかしなことを言ったかしら?」

「いえ、お気になさらないでください。そもそも大災厄なんて本当に起きるか怪しいですし、残念がる必要もないと思います」

(なっちゃんは信じていないのね。それとも他人事? 私はロストブが気がかりだわ。私以外の水の精霊憑きが見つかったかしら……)

教会はきっと必死になって新たな聖女候補を探していることだろう。

モニカが物思いにふけっていると、シーツの皺を伸ばしていたナターシャがまた手を止めて微笑んだ。