いや、打ち明けたというのは大袈裟か。

モニカは隠していないので、ナターシャの前でその力を使っただけだ。

それは今朝も同じで、ナターシャが持ってきてくれたタオルを水盆に浸すことなく湿らせた。

ナターシャは最初こそ驚いていたものの、今はもう慣れた様子で顔を拭くモニカを見ている。

「便利な力ですね。私も水の精霊に憑いてほしかったです。冬になっても水仕事で手荒れの心配をしなくてよさそうですもの」

「そうしたらなっちゃんは聖女になれるかもしれないわね。覚醒後はこんなちっぽけな力じゃなく、豪雨を降らせることもできるわ。大災厄を鎮めて天に召されるのよ。聖女ってすごいわよね」

三日三晩豪雨を降らせて魔力を使い果たした結果は死。

そう聖女伝に記されている。

だからこそ聖女は大災厄を迎えるまで大切にしてもらえるのだ。

モニカは幼い頃から国を救って死ぬのは尊いことだと教えられてきた。

力の使い方を誤って精霊が離れていくのは怖いと思ったが、大災厄を鎮めて死ぬことに恐怖心はない。

聖女は天に召された後も皆の心に生き続け、永遠に感謝されるから幸せなのだと信じていた。