最前列の中央に腰かけているのは四十四歳のロストブの国王ルビウス三世だ。

口髭を生やし二重顎の肥えた体形をしている国王は癇癪持ちだが、気に入った者には優しくしてくれる。

モニカは次代聖女ということで、平民でありながらも宮殿での晩餐会に招かれるほど目をかけられていた。

モニカは祭壇横のカーテンの陰に控え、そっと列席者たちを覗いている。

その顔触れには見たことのない者もいた。

(あの方たちが隣国からの賓客ね……)

ロストブには隣国が三つある。

西に領地を接しているのがオルグランド、東がレイマーク、北側がバーヘリダム帝国だ。

モニカは行ったことがないが、バーヘリダムは広大な領地を持ち緑豊かな大国だと聞いている。

オルグランドとレイマークもロストブよりは豊かで……というよりロストブが貧しいのだ。

砂漠地帯に作物は育たず、これといった産業もない。

飢えで亡くなる者も珍しくなかった。

国賓として隣国からも王侯貴族が招待されている理由は、聖女の存在が彼らにとっても重要であるからだ。

オルグランドとレイマークの一部は大災厄の被害範囲に含まれるらしい。