大災厄は三百年周期で繰り返される。

初代聖女のアグニス以降、水の精霊憑きの乙女がロストブを救ってきた。

そして来年が大災厄の年。

否応にもモニカへの期待が強まる。

導師の言葉にモニカは真剣な顔で頷いたが、疑問も感じている。

(三日三晩、豪雨を降らせる力が、本当に私の中に眠っているの?)

モニカの水の魔力は弱い。

小さな雨雲を呼んでコップ一杯に水を溜めるのが精一杯だ。

砂の悪魔とも言われる巨大竜巻を鎮められるとは思えない。

けれどもモニカは、疑問が不安に変わる前に自分で打ち消した。

(私が聖女だと導師様が言うんだからきっとそう。今日の儀式後にはすごい力が使えるようになるんだわ)

元来、素直で前向き、好奇心旺盛でもあるので、覚醒の儀にワクワクと胸を高鳴らせるのであった。

間もなくして鐘が打ち鳴らされ儀式が始まる。

聖堂内は最奥に祭壇があり、導師がその手前に立って会式を告げている。

それを聞くのはそうそうたる面々で、貴族や国家の中枢を担う者たち、教会幹部らが扇状に広がる豪華な椅子に腰かけていた。