追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

ナターシャは二歩ほど下がった位置で背筋を伸ばして立ち、威圧感に少々緊張しながら答える。

「仰せの通りにいたしました。モニカ様が私の許可証で城門を出られたのが十四時五分です。寄り道をなさらなければ十四時二十分の乗り合い馬車に乗って東地区に向かったと思います」

モニカに城を抜け出すようそそのかしたのも、東地区を提案したのも、なにもかもシュナイザーに命じられてのことだった。

途中で誰かと出会わせたいのか時間指定までされたのだ。

使用人の分際で皇帝に理由は尋ねられず、ナターシャは困惑していた。

(東地区は貧民街。最近はマシになったそうだけど他の地区より治安が悪いわ。あんなところにひとりで行かせるなんて、陛下はモニカ様を危険にさらしたいの?)

机上には書類が何十枚も積まれている。

シュナイザーは未処理の箱から一枚を取り、素早く目を通してサインをしては処理済みの箱に移している。

羽根ペンで指示を書き込んだり、バツをつけたりしている書類もあった。

仕事をしながら報告が聞けるとは器用な男だ。