「モニカは何者なの?」
そう尋ねられたので正直に答えようとしたけれど、口を開く前にバンジャマンがドニを諫めた。
「これこれ、レディに失礼なことを聞くもんじゃない」
「年齢や体重を聞いたわけじゃないのに?」
「お嬢さんはお嬢さん。どこの誰でもいいんじゃ。そんなことよりドニは働いてくれんかの」
「お客さんがいないよ」
「お嬢さんにうどんをご馳走したいんじゃ。表の鉢植えからネギを引っこ抜いてこい」
(うどん。それも知ってるわ。食べたことがないのに)
外まで漂っていたいい香りはうどんのだしだと気づく。
お腹は空いていないのに久しぶりに食べたいという気分になり、疑問がまたひとつ増えてしまった。
*
モニカが鶴亀亭を出た頃、ナターシャは皇帝執務室に呼ばれていた。
本や書類がぎっしり詰まった大きな書棚が五つに柱時計、休憩用のソファセットがあり、執務机は部屋の中央にドンと構えている。
機能的で装飾性の少ない部屋だ。
ここにいるのはふたりだけで、執務机に向かっているシュナイザーが「どうだ?」と問う。


