追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「即位の時は悪い噂が流れたけど僕は皇帝派だよ。今の陛下になってから今まで見捨てられていた僕らの暮らしも少しはよくなった。金持ちは納税額を増やされて不満そうだけどね。それに比べて富裕層に人気のゴウランガ公爵は、僕は好きじゃない」

東地区に集合住宅を建て上下水道を引くというシュナイザー提案の事業計画に、真っ先に反対したのがゴウランガ公爵という名門貴族なのだそう。

議会でかなり火花を散らした結果、なんとか東地区再開発の予算案が通ったそうだ。

(皇帝はふんぞり返って命令していればいいわけじゃないのね。貧しい人々のための事業。陛下はいい人なのかしら?)

大人しくしていろと言ったシュナイザーの傲慢そうな顔を思い出しつつ考えていたら、ドニが足を止めた。

「着いたよ」

周囲の民家よりやや大きいという程度のこぢんまりとした店で、鶴亀亭と書かれた看板がかかっていた。

入口の木製扉は開放されており、中からいい香りが通りまで漂っている。

モニカはスンスンと鼻を鳴らした。

(不思議な香り。嗅いだことはないはずなのに、なぜか懐かしい気がするわ)

「どうぞ」