追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

(豊かな大国だから民家も立派なんだと思ってたけど違うのね。この辺りはロストブの町とあまり変わらない)

そう思ったが視線を遠くに向けると、大きな建物が見えた。

横長の三階建ての家で窓がたくさんあり、それが数軒連なっている。

「あの大きなお屋敷はなに?」

モニカが指さすとドニが眉を上げた。

「知らないの? 国営の集合住宅だよ」

シュナイザーが帝位に就いた二年前、彼は真っ先に貧民街であるこの東地区を視察した。

当時、粗末な家にも住めない路上生活者もいたらしく、無償で住居を提供するために集合住宅の建設を計画したそうだ。

けれども多額の国家予算を割く計画に、議会からは反対の声が多く上がったという。

「議会ってなに?」とモニカは聞いた。

ロストブは国王がなんでも決めるため、臣下は従うのみで議会制度はない。

モニカの無知ぶりにドニは驚いているが、馬鹿にせず教えてくれる。

「法律や国家事業の予算配分を決めるのが議会だよ。皇帝だからと言ってなんでも命令が通るわけじゃない」

「そうなの」

ドニは周囲を見回し声を潜めて続ける。