追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

振り向かない彼を不思議に思い、その背に手を伸ばしたら――。

彼が前のめりにばったりと倒れた。

「シュナイザー!?」

砂地に伏せる彼は完全に脱力していた。

慌てたモニカは渾身の力を込めて重たい体を仰向けにし、顔についた砂を払って気づく。

「嘘、でしょ……」

青白い顔に生気は感じられず、瞼は半分閉じられていた。

揺さぶっても頬を叩いても反応がなく、胸に耳をつけても鼓動は聞こえない。

輝きを失った翡翠色の瞳は星空もモニカも映していなかった。

モニカはガクガクと震え、泣きながらすがりつく。

「やだ……お願い、私を見て。なにか言って。シュナイザー、シュナイザー!」

怖いほどに美しく、星のさざめきが聞こえそうなほど静かな砂漠に、彼を呼ぶモニカの悲鳴だけが響いていた。



聖女の正装である白いローブを纏ったモニカは、ラクダの背に揺られて聖地までやってきた。

ナツメヤシは緑の葉をそよがせ泉は透き通り、石壁の聖堂は変わらぬたたずまいでモニカを迎えてくれた。

ここは六年前の大災厄で砂に埋もれたが、その後一年かけてロストブの民が砂をかき出し、元の状態に戻された。