「腹ぺこ小僧の方がわしよりうまく風を動かす。ウインドルよ、そう思わんか?」

それまでずっと狸寝入りを決め込んでいたウインドルがハハと笑った。

『そうかもね。こいつの中は寝心地がいい。おいらと性格が似てるから』

「馬鹿言うな。ウインドルのようないい加減さはないつもりだぞ」

頭上の精霊に言い返したシュナイザーはドアへ向かう。

「バンじい、つらい記憶を語らせてすまなかった」

(結局、モニカを助ける手がかりは掴めなかったが……)

肩を落として寒気の中に出ていけば、その背に老爺の声がかけられる。

「もしもわしの到着が一日早ければ、もしもわしがもう少しうまく風を操れたら、ローラは生き残れたんじゃないかと今も悔いておる」

シュナイザーはハッとして振り向いた。

「俺ならなんとかなりそうなのか?」

「さあ知らんの。誰もわからん。すまんがわしはローラのように優しくなれん。これまで色々してやったのはローラに力を貸せと言われている気がしてじゃ。わしは可能性があるお前さんたちが羨ましい」

あとは自分で考えろとばかりにドアがバタンと閉められた。

今も前世の悔いと戦っているバンジャマンが、この世を恨んで投げやりにならずにシュナイザーとモニカに手を差し伸べてくれた。

(十分、優しいだろ)

シュナイザーは閉じられたドアに向けて深々と頭を下げた。