憐憫の視線を向けつつシュナイザーが問う。

「水の入ったガラス玉とは、モニカが持っていたあれか?」

「そうじゃ。お嬢さんの助けになると思っての。組紐は後世の誰かが作り直したものじゃな。さすがに三百年前のものはくたびれて切れてしまったんじゃろう。あのお守りは……」

クリスはローラ亡き後も生きて年老いて人生を終えた時に、もちろんお守りとも別れた。

バンジャマンとして二度目の生を授かった時にはまだ前世の記憶を蘇らせておらず、ごく普通の青年として暮らしていたのだが、ふらりと立ち寄った骨董店でローラのお守りと出会い前世を思い出したのだ。

「導師となるお前さんと、聖女となるお嬢さんに出会ったのはローラのおぼしめしじゃろう。優しい姉じゃったからの」

バンジャマンは腰を叩いて立ち上がりドアに向かった。

ドアを半分開けてこっちを見たので、話は終わったから帰れというのだろう。

寒気が店内になだれ込もうとするのをシュナイザーは風の力で食い止める。

指先ひとつ動かさずに風を操るシュナイザーにバンジャマンが目を細めた。