両手でごしごしと顔をこすり、唇を震わせている。

「バンじい。頼む、続きを」

酷だとわかっていても、モニカを失いたくない一心でシュナイザーは話を促した。

「三日目の夜じゃった。大竜巻は町を襲う前に消滅し、ローラは倒れた」

最後の力を振り絞ってローラが胸元から取りだしたのは中に水の入ったガラス玉で、紅白の組紐がついていた。

町でガラス玉を買い、水はローラが魔力で入れたのだと思われる。

組紐も彼女が編んだのだろう。

それをクリスに渡してローラが微笑んだ。

『クリス、お誕生日おめでとう。これをあなたにあげるわ。お守りよ』

五歳の誕生日に招き猫をもらったクリスが大喜びして以降、ローラは毎年必ず手作りの贈り物をくれた。

ローラは弟を喜ばせるのが好きなのだ。

クリスは泣き叫びたくなるのをこらえ、腕の中の姉に向けて笑った。

『ありがとう。すごく嬉しい。ローラの弟として生まれて幸せだったよ。俺は大丈夫だから安心して……』

それが姉弟が交わした最後の会話だった。

ローラの目から生気が失われ、他に誰もいない聖地にクリスの慟哭が響いた――。