まるで川が連れ去ろうとしているかのように感じ、千早は畏怖した。
(伊邪那櫛穴命様、お願いです弟を離してください。たったひとりの大事な弟なんです。助けてくださるなら代わりに私を……)
片手では無理なので、千早は支えとしていた雑草を離すと両手で渾身の力を込めて弟の手を引っ張った。
その反動で自分は川の中へ。
「お姉ちゃん!」
たちまち流され、水に沈み、弟の泣き叫ぶ声も祭りの賑わいも聞こえなくなった――。
千早の魂がモニカに戻される。
ゆらゆらとたゆたう白い世界に浮かんでいるモニカは、冷や汗を拭い呼吸を整えた。
(悠清が助かってよかった)
前世の終わり方を嘆くよりも弟の未来があそこで途切れなかったことにホッとしていた。
すると目の前に精霊が現れた。
前に夢で会った時はローブ姿だと思ったが、よく見ると襟の合わせが着物風である。
モニカはもう精霊の名を知っていた。
「あなたは伊邪那櫛穴命ね?」
精霊が透き通る長い髪を揺らめかせて微笑する。
「我をそう呼ぶ世界もある。正しくは“イザナ・クシャナ”だ」
モニカはその名を噛みしめるように復唱した。
(伊邪那櫛穴命様、お願いです弟を離してください。たったひとりの大事な弟なんです。助けてくださるなら代わりに私を……)
片手では無理なので、千早は支えとしていた雑草を離すと両手で渾身の力を込めて弟の手を引っ張った。
その反動で自分は川の中へ。
「お姉ちゃん!」
たちまち流され、水に沈み、弟の泣き叫ぶ声も祭りの賑わいも聞こえなくなった――。
千早の魂がモニカに戻される。
ゆらゆらとたゆたう白い世界に浮かんでいるモニカは、冷や汗を拭い呼吸を整えた。
(悠清が助かってよかった)
前世の終わり方を嘆くよりも弟の未来があそこで途切れなかったことにホッとしていた。
すると目の前に精霊が現れた。
前に夢で会った時はローブ姿だと思ったが、よく見ると襟の合わせが着物風である。
モニカはもう精霊の名を知っていた。
「あなたは伊邪那櫛穴命ね?」
精霊が透き通る長い髪を揺らめかせて微笑する。
「我をそう呼ぶ世界もある。正しくは“イザナ・クシャナ”だ」
モニカはその名を噛みしめるように復唱した。


