追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

川の危険性はもっと幼いころから繰り返し教えてきたので、ひとりで勝手に土手を下りるはずがないと思っていた。

それなのに声は土手の下方の川縁から聞こえる。

友達ふたりもついてきてくれて、携帯電話のライトで千早の前方を照らしてくれた。

「悠清!」

夜の闇の中に浮かび上がったのは、水辺のイネ科の雑草を両手で必死に掴んでいる弟の姿。

下半身は水につかり、今にも流れに持っていかれそうになっている。

いつもは穏やかな伊邪那川は、昨夜山の方で降った大雨のせいで水かさが増していた。

悠清の少し上の土手の途中に赤いヨーヨーが引っかかっていて、それを見た千早は瞬時に悟る。

(私のせいだ)

千早が嘘をついたから、悠清は境内で友達を探し回った。

見つからなくて悔しくなり、ヨーヨーを力いっぱい投げたのだろう。

それが土手を転がって草に引っ掛かり、取ろうとしたに違いない。

下駄を脱ぎ捨て土手を駆け下りた千早は、片手で雑草を掴んで支えとし、もう一方の手を伸ばして弟の手首を握った。

「お姉ちゃん、怖いよ」

「大丈夫だから落ち着いて。引っ張り上げるよ」

弟の体はいつもの何倍も重かった。