追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

夜の海や港のマーケットではなく、神社の例大祭だ。

(この風景、前にも夢で見たわ)

川に向かって突き出た高床の舞台で巫女がふたり舞いを披露している。

巫女は母娘で、十七歳の娘の名は千早(ちはや)という。

千早の祖父はこの伊邪那川(いざながわ)神社の宮司で、父は禰宜。

四歳の弟、悠清(ゆうせい)がいずれ後を継ぐ。

一家で切り盛りしている神社で生まれ育った千早は小学生の時から巫女として手伝ってきた。

(千早は私だ。これは前世の記憶だわ)

モニカの魂が千早の中にスッと戻される。

(これ終わったら自由時間がほしいってお母さんに言ってみよう。三十分くらいでいいから。せっかくの夏祭りだもん)

すまし顔で優雅に舞いながら、千早が考えているのはそんなこと。

浴衣を着て屋台を楽しんでいる友達が羨ましく、少しだけでも合流したかった。

巫女舞は目の前を流れる伊邪那川の神、“伊邪那櫛穴命(いざなくしあなのみこと)”に奉納するものなのだが、CDの雅楽が止まると川辺で覗いていた観衆から拍手が沸いた。

奥へ引き上げた千早は早速、母にお願いする。

「友達が来ているの。遊んできていい?」