追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

見知らぬ客が海の方を指さした。

同じような声があちこちから上がり、モニカも沖を見ると赤々とした点が見える。

「船火事だ」

誰かが声を上げたのと同時に、港が慌ただしくなる。

倉庫や管理棟から船乗りや従業員が出てきて、停泊中の漁船を出そうと準備に追われていた。

「大型商船だ。五十人は乗っているぞ。ありったけの漁船を出して救助に向かえ」

「城に知らせは?」

「とっくに出した」

そのような会話も海風にのって聞こえた。

「モニカ様」

後ろから声をかけてきたのは護衛兵のひとりである。

「ご帰城ください。混乱に巻き込まれる恐れがありますので」

火災は沖で起こっているとはいえ、興奮した野次馬が現れるかもしれない。

現にモニカを守って立つもうひとりの護衛兵は、火事をよく見ようとして人をかき分ける男にぶつかられていた。

「消火や救助活動の妨げにもなるかもしれません」

説得を重ねる護衛兵にモニカはハッとした。

「消火……。あの、私を燃えている船の近くまで連れて行ってもらえませんか?」