追放された水の聖女は隣国で真の力に目覚める~世界を救えるのは正真正銘私だけです~

「俺はモニカを愛している。できることならお前を幸せにしてやりたかった」

「また嘘をつくの?」

「嘘じゃない。本心だ」

モニカの胸に悲しみが満ちる。

(信じないわ。裏切られて傷つくのはもうたくさんよ)

デザートはモニカの好きなフルーツをふんだんにのせたタルトだと聞いていたが、いらないと断って静かに退室した。

涙を手の甲で拭い、唇を噛む。

彼の言葉に深く傷ついているのは確かだが、彼への愛を消せずにいる自分がなにより悔しかった。


婚姻の儀を一週間後に控えた今日は、セントアグニス教の祝日で“聖女の日”と呼ばれている。

アグニスが聖女の力に覚醒した日だとされているが、三千年前の暦と現代のものが同じなのかは怪しい。

それでも信徒たちにとっては大切な日で、精霊とアグニスに祈りを捧げ、讃美歌を歌い、乾燥させたナツメヤシの実を入れたパンを焼いて親しい人々と分け合って食べる。

ロストブの修練所ではこれが子供たちにとってなによりのご馳走だった。

豊かな大国バーヘリダムではドライフルーツ入りのバターケーキを焼くそうだ。